ムコール症の特徴

カビの胞子を吸い込んだり、まれではありますが皮膚の傷口などから体内にカビの胞子が入りこむことで感染する可能性があるのがムコール症です。ムコール症は(侵襲的)深在性真菌症のひとつで、真菌の中でもケカビ目のさまざまな種類が原因となります。クモノスカビ(Rhizopus)、リゾムコール(Rhizomucor)などもありますが、接合菌ともよばれるムコール(Mucor)、いわゆるケカビもそのひとつです。ムコールは土壌や野菜、果物などに発生し、綿毛のような集落を形成します。最初は白色や黄色ですが、成長するにつれて濃灰色または緑灰色に変化します。とても発育が早く、短時間で大きな集落を形成することで知られます。これらのカビは通常であれば感染症を引き起こすことはないのですが、免疫機能を低下させる病気や糖尿病に罹患している場合などに感染のリスクが高くなります。

ムコール症について

一般的なムコール症はカビの胞子を吸い込むことで起こりますが、いくつかの病型があります。そのうち最も発症頻度が高いのが鼻脳型ムコール症で、感染がおこりやすい部位は鼻、副鼻腔、眼、脳です。鼻腔・副鼻腔から感染し、眼窩(がんか)頭蓋底へと進展していきます。重度の感染症となった場合は、命を奪うこともあります。主な症状は痛みや発熱で、また眼窩に感染している場合は眼が突出することがあり、視力が失われることもあります。脳に感染した場合は言語障害やけいれん、麻痺などが起こります。
肺型ムコール症は肺胞や気管支に感染することで起こります。症状としては肺組織の炎症、高熱、せき、呼吸困難などがあげられます。肺型ムコール症は診断が難しいのですが、進行が早く致死率が高いことから、初期段階での正確な診断が求められます。
頻度として少ない皮膚型ムコール症は、傷口などバリア機能が低下している皮膚や皮下組織に感染することで発症します。患部の周囲が赤く腫れ、潰瘍や水疱ができ、発熱や痛みを伴う場合もあります。