ロリトレムBは何に発生するか

エンドファイト(内生菌)が生産する毒素がロリトレムBです。エンドファイトとは植物に寄生したり、共生する真菌類の総称です。エンドファイトはイネ科牧草をすみかにして、植物の栄養を摂取しますが、その代わりに植物を食い荒らそうとする害虫を寄せ付けないために、害虫の毒素となる物質を作り出し、植物を害虫から守ります。
そこで問題になるのは、エンドファイトに感染したペレニアルライグラスストロー(種子を採取した後の細麦といわれているイネ科の多年草)をウシなどの草食家畜が食べて中毒症状を起こしてしまうことです。

ロリトレムBの危険性

筋肉や脳が働く仕組みのひとつに「BKチャネル」がありますが、これは細胞の内外のイオンの出入りを制御するなどのさまざまな生理的機能に関わっています。ロリトレムBはこのBKチャネルの仕組みを妨害することで、さまざまな神経症状を引き起こすとされています。
軽度の症状としては頸部のけいれん・発熱・ふらつき、重篤になると激しいけいれん・筋肉のれん縮・歩行異常・起立不能などを引き起こすため、命を落とす危険性も出てきます。
北米・オーストラリアなどでは高濃度のロリトレムBに汚染された牧草を家畜が食べ、中毒症状を起こしたとして大きな問題となりましたが、日本においても1990年代に黒毛和種繁殖雌ウシや育成ウシで中毒の報告がありました。他にもウマ・ヒツジ・シカなどの草食動物に中毒症状が確認されていますが、なかでも黒毛和ウシはロリトレムBに対する感受性が高いとされています。
日本では家畜に与える輸入乾草に含まれるエンドファイト毒素の濃度が基準値以下かの確認や、乾草を3種以上組み合わせることで、毒素の濃度が1/3以上にならないようにすることなどが主な予防策として挙げられています。