ステリグマトシスチンは何に発生するか

ステリグマトシスチン(STC)は、主にアスペルギルス属のかび(A. versicolor、A.nidulansなど)によって産生されるかび毒(マイコトキシン)で、エメラルドグリーン色の特有な集落を形成します。
1953年、A. versicolorの代謝産物にカビの別名Sterigmatocystis versicolor Vuilleminにちなんで鳥取大学の初田勇一教授らがステリグマトシスチン(Sterigmatocystin)と命名しました。その後1962年にBullockらによってその構造が明らかにされています。
世界中の広い地域で分布し、多くの関連物質が発見されているのも特徴で、チーズ・キャッサバ・ふすま・コーングルテンミールなどの食品、中でも小麦や大麦・とうもろこしなどの穀類から多く検出が報告されています。

ステリグマトシスチンの危険性

ステリグマトシスチンは発がん性の強いかび毒であるアフラトキシンの前駆体で、ラットやマウスに長期投与すると肝癌、肺癌などを生じることが報告されています。ただ、急性毒性は低いとされ、毒性はアフラトキシンが1/125ほど、発ガン性は1/250程度とされています。
日本では過去に長期保存されていた穀類等から検出されたことはありますが、人体や家畜に中毒事故を及ぼしたという報告はないため、飼料や食品における規制値は設定されていません。
また、他のかび毒と同様に熱と乾燥に強く、高温調理しても分解されることはありません。加工にも強いことから、一度汚染された食品から除去することはとても困難です。これらのことから、農林水産省における「優先的にリスク管理をおこなう危害要因のひとつ」として、他のかび毒とともにリストアップされています。